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低身長診療の進め方

1.入り口

低身長の診療の進め方をご説明します。

まず、身長、体重を測定します。
髪留めをしていればはずし、厚い靴下も脱いでいただきます。
測定時刻による身長の差が大きい(朝は夕より1-3cm高い)ので、測定時刻も記録します。
きちんと気をつけをして、背筋を伸ばし、まっすぐ前を見て測定します。

2歳以下ではあおむけ(=仰臥位)で測定しますが、この場合、立位での身長より大きく出ます。この値は、「身長」ではなく、「体長」です。

座高や頭囲を測定することもあります。

2.身長の評価

低身長で医療機関を受診するのは、
(1) 身長を伸ばす治療を受ける希望を持っていて、治療対象になるかどうか知りたい場合、
(2) 何らかの疾患の症状として低身長になっていないか知りたい場合、のいずれかと思います。

(1)、(2)のどちらも、低身長の定義にあてはまることが前提条件になります。

正常身長と低身長とに明確な区切りがあるわけではなく「任意の線引き」が行われています。
正常身長と低身長とは、境界のない「低身長スペクトラム」と考えるとよいかもしれません。

統計学では一般に、2σ(2シグマ)を正常限界と考えています。
つまり20回に1回しか起こらないことは「正常な現象」ではない、と考えるという考え方です。
これを身長にあてはめると、高い方と低い方、それぞれ40人に1人の頻度以下でみられる身長は「正常な現象ではない」つまり高身長や低身長と判断することになります。

身長が2σを超えているか、で判断し「正常な現象ではない」ということになれば、(1)、(2)の判断をすることになります。
しかしあくまでも「低身長スペクトラム」で、正常身長と低身長とに明確な区切りがあるわけではなく、2.5σを基準にすべきだ、3σを基準にすべきだ、あるいはもっと別の基準など、いろいろな考え方があります。

なお、σをSDとかZスコアと呼ぶこともあります。SDは標本集団の標準偏差で、ここで用いるのは母集団の標準偏差ですからσが正しい用語です。

3.骨年齢判定

手部X線撮影を行い、骨年齢を測定します。T-W法、G-P法などの基準に従って、骨年齢を調べます。

骨端軟骨の石灰沈着が完了していれば、骨の伸びは終了ということになります。

頭部X線撮影でトルコ鞍の形態を見ます。

4.問診

次に病歴を伺います。在胎週数、出生時体重、出生時身長、出生時に異常がなかったか、仮死で生まれなかったか、出生後の病気、成育歴、知的発達の状態を伺います。

両親の年齢、身長、思春期が早かったか遅かったか(早ふとり、遅ふとり)、家系的に低身長であるか、兄弟の年齢、身長、をお尋ねします。

身長以外の症状がないか、特に視力視野、排尿の問題がないか、を教えていただきます。

成長の記録(母子手帳、保育園幼稚園小学校での測定記録)をみせていただき、成長曲線を作成します。

5.身長伸び率チェック

成長曲線に基づき身長伸び率を推測します。正確な身長測定ができていない可能性もあるので、数点以上のデータを用いる必要があります。

伸び率低下があれば、次のどの状態か、考えることになります。

・最終身長到達(この場合、骨端閉鎖しています。)
・思春期直前の生理的伸び率低下(多少伸び率低下する程度です。)
・伸び率低下がなんらかの疾患の症状である場合

6.ご希望の確認

成長ホルモン分泌の検査を実施するかしないか、成長ホルモン以外の要因の検査を実施するかしないか、ご希望を伺います。

特に女子の場合は、ターナー症候群の可能性が否定できないときに、染色体検査を行うか行わないか、について話し合います。

7.診察

全身状態(腎疾患、消化器疾患など全身的な疾患による低身長か)、

四肢と体幹の長さバランス(骨系統疾患か)、

奇形徴候(顔貌の特徴、四肢の奇形、内臓奇形など。ターナー症候群、ヌーナン症候群、プラーダーヴィリー症候群、成長ホルモン完全欠損、ラッセルシルバー症候群、SHOX遺伝子異常、片親性ダイソミーなどの特徴について)を調べます。

思春期の進行状態をタナー法に従って調べます。

8.成長ホルモン分泌能検査

成長ホルモン分泌能をみるために、2種類以上の薬剤を用いた負荷試験を行います。
成長ホルモンは「エピソード(挿話)的分泌」をするため、1回の採血で分泌状態をみることはできません。
薬剤で刺激を行い、どれだけ分泌されるかを調べることが必要です。
検査は午前中、朝食を食べない条件で行います。
甲状腺機能低下や中枢性尿崩症がある場合にはそれを補正してから検査を実施します。

このような薬剤刺激による分泌を調べることは多くのホルモンで行われますが、成長ホルモン以外では「TSHはTRH負荷で」、「ADHは高張食塩水負荷で」などのように1つのホルモンにだいたい1種類の薬剤が決まっていて、1回の検査で分泌状態がはっきりします。

しかし成長ホルモンでは7種類以上の刺激薬剤の中から少なくとも2種の検査をやらなければならないとされています。
これは、成長ホルモンの分泌調節が多系統の神経調節を受けているため、様々な刺激を与えてみる必要があるということによります。

問題になるのは、複数の検査で異なる結果・・ある検査では分泌あり、他の検査で分泌なし・・が出た場合にどう判断するかです。
「分泌なし」が偽陰性で本当は出ている、に反論はありませんが、「分泌あり」も偽陽性の可能性は十分にあります。
現行の小児慢性疾患の診断基準では、偽陽性の可能性を全面否定しています。
政策上やむを得ないとは思いますが、厳しすぎる基準と思われます。

当院ではまず、塩酸アルギニン負荷試験とクロニジン負荷試験を行い、次にGHRP2負荷試験に進みます。

血中成長ホルモンの測定についても、測定キット毎の差異が問題になります。
RIA法での検査値が絶対基準になっており、それに換算した値で判断します。
当院では東ソーのキットでAIA360による院内測定を行っており、30分で即日結果がでます。

30分毎に120分まで(GHRP2負荷試験では15分毎に60分まで)採血し、分泌頂値が6ng/ml以下であればGH分泌不全と判断されます。

9.他の血液検査

負荷試験で初回に採取した血液で診断上必須項目の検査を行います。

アルカリフォスファターゼ(骨芽細胞の活性を見ます)、甲状腺機能の指標、抗甲状腺自己抗体、IGFー1(ソマトメジンC、GHにより肝臓から分泌される下位ホルモン)、乳酸・ピルビン酸、他の脳下垂体ホルモン(LH, FSH, PRLなど)、25-OH-ビタミンD(くる病の検査)、血中亜鉛、その他血球系検査、生化学一般検査など

10.頭部画像検査

頭部MRIもしくはCT検査を行い、間脳下垂体周辺に占拠性病変、先天性病変などがないか、検査します。

11. 診断、成長ホルモン治療の対象かどうか

次の疾患を念頭に置いて診断を行います。

汎下垂体機能低下症、成長ホルモン単独欠損症(思春期前にはゴナドトロピン分泌の評価が難しいので、この疾患を確定するのは困難)、甲状腺機能低下症、思春期早発症骨成熟後、先天奇形症候群(上記が代表的なもの)骨系統疾患(アコンドロプラジアと類似疾患、脊椎骨端異形成症、くる病)、非内分泌性非症候性低身長(家族性低身長、体質性低身長)、子宮内発育遅延に続発する低身長、その他

診断によって、成長ホルモン治療の対象になるかどうか、注射量が決まります。治療対象は以下の通りです。

疾患 特徴的所見 開始年齢 σ値 GH投与量
成長ホルモン分泌不全性低身長症 負荷試験(乳児を除く)でのGH分泌不全の証明 0.025
成人重症成長ホルモン分泌不全症 負荷試験でGH分泌廃絶、大半で器質的下垂体疾患 18歳以上 成人発症では身長基準なし 0.003-0.012
ターナー症候群 X染色体異常の検出 年齢制限なし 0.05
アコンドロプラジア 骨X線所見(軽症型あり) 年齢制限なし 0.05
プラーダーヴィリー症候群 特異奇形徴候、15番染色体部分欠損または片親ダイソミー、インプリンティング異常 年齢制限なし 0.035
SGA性低身長 出生時体重、身長 3歳以上 2.5σ、伸び率低下 0.033-0.067
ヌーナン症候群 特異的外表・内臓奇形徴候 3歳以上 0.033-0.067
慢性腎不全に伴う低身長 慢性腎不全 年齢制限なし 身長基準なし 0.025-0.05

12.在宅自己注射の指導

導入期指導
注射デバイスの使用法、薬剤の保管、注射の手技・部位・タイミング、シックデイ対応、問合せ・連絡の方法 などをご指導します

継続期指導
規定通りに注射できているか、シックデイの有無、手技・部位・タイミングの確認、薬剤・注射針の残量確認、保管状況、などについて伺い、必要な点をご指導します

13.再来

身長、体重測定、一般的問診、全身的診察、上記指導項目の確認などを行います。
血液検査を実施し、異常がないことを確認します。

治療継続のための処方、次回予約。

 

 

 


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小児科・内科・精神科
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