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知的障害特別支援学校における農耕作業学習に関する考察

「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の試み

1)佐賀県立大和特別支援学校  畠山富士雄

2)佐賀駅南クリニック     久野建夫

キーワード:作業学習、アクティブ・ラーニング、次期学習指導要領

Ⅰ.問題の所在

次期特別支援学校学習指導要領ではアクティブ・ラーニングの考え方が「主体的・対話的で深い学び」として示されている。

今回は、農耕作業学習におけるアクティブ・ラーニングに沿った授業改善を検討した。その結果を報告する。

Ⅱ.研究の目的

中学部農耕作業学習におけるアクティブ・ラーニングに沿った授業改善を行い、その結果を検討する。

Ⅲ.方 法

 

  1. -(a) 授業の概要
    (1) 対象者:Y 特別支援学校中学部13 名(男子10 名、女子3 名)。生徒の学年や作業能力等の実態により3 班に編制。教員数:5 名。
    (2) 期間:3 学期13 日間の単元「売上げ6 万円で食事・買い物に行こう」。
    (3) 作業内容:九条ネギとホウレン草の収穫と近隣ショッピン
    グセンターでの販売。1-(b) Johnson と涌井(2016) の示した「アクティブ・ラーニングを成功に導く6 条件」(以下で「6 条件」と略す)に沿って農耕作業学習の方法・内容を再検討し、改善点を洗い出す。1 -(c) 授業改善の要点としての「話し合い活動の充実」:6 条件による改善点洗い出し(後述)に基づき導入した中学部農耕室で、生徒全員参加で毎時導入時の9:20 ~ 9:40 と、振り返り時の14:35 ~ 14:50 に、各10 分程度話し合い活動を実施する。
  2. 今回の農耕作業学習における生徒の参加態度、変容を畠山が観察する。
  3. 次の49 項目からなるアンケートを作成し、単元前と後に3 名の各学年担当教師に回答してもらう。ウィルコクソンの順位和検定を実施した。
    (1) 6 条件が実現されたかを問う6 項目。
    (2) 話し合い活動に関する3 項目。
    (3) 作業能力が向上したかに関する28 項目。(千葉大学教育学部附属特別支援学校(2016) の「作業能力3 条件28 項目」に従い作成した。)
    (4) 知識、技能に関する12 項目。

表1 農耕作業の改善点

6 条件 前年度までの内容 改善点
1 生徒の互恵的相互依関
6 万円売り上げて食事買い物に行く共通目標、教師の賛、報酬等。 作業役割分担に話し合い活動を通じて出た生徒の意見を反映させる。
2 生徒同士の対面的なり
取りの機会
導入時、作業の分担時、振り返り時、校内外の販売機会でのやり取り。 作業役割分担に話し合い活動を通じて出た生徒の意見を反映させる。
3 個人の責任がはっきし
ている
担当教師が各作業において、励まし、言葉かけ、手添え等による指導。 振り返りで教師と生徒が責任を再確認する。
4 ソーシャルスキル・同
スキルが教えられ、頻繁に活用できる状況設定
農耕作業全般で、授業導入時の全体への説明、分担場面での説明と言葉かけ、振り返り時の説明等。 教師がスキル説明時に、必ず生徒に確認させる。
5 うまくいった共同や改善点についてのチームの振り返り 担当教師と作業ノートでの個別の振り返り、集団での振り返り、教師5 名の振り返等。 生徒一人一人の発表と振り返りをさらに時間をとる。
6 発達障害等に対応し学習や教材を言語的能力に偏らない 農耕作業全般で、デジカメと32型テレビによる視覚的教材による説明、手添えと言葉かけ等。 ICF の観点から人的支援と物的支援にコードを対応させ視覚支援を充実させる。

表2 単元計画

  1. 単元名 3 学期「売り上げ6 万円で食事・買い物に行こう」
  2. 単元の目標
    (1) 自分の役割や日程を知り、主に収穫・販売の活動の繰り返しで知識と見通しをもたせる。
    (2) 意見を聞いたり述べたりできる。
    (3) 作業や販売等を、6 条件をもとに行う。
  3. 単元の展開と学習内容(全4 時間 × 13 日)

Ⅳ. 結果

  1. (方法1(b))農耕作業学習について、6 条件の視点から改善点を示した(表1)。
    6 条件は個々に独立しながら関連していることが感じられた。項目2,5 で、生徒同士の対面的なやり取りや振り返りの機会をさらに十分取る必要性が考えられた。
    そこで「話し合い活動の充実」を授業改善の要点とした。他の4 つの条件は既存の授業でかなり実現できていると思われが、作業内容に拘泥しすぎたり、時系列で捉えたりして、生徒の主体性を見逃すところが多かったという点を反省し改善した。
    それを基に、表2 の単元計画と図1 の指導案により生徒を支援した。
  2.  ( 方法2) 今回の単元での教師の観察では、話し合い活動を重視したことで、生徒の一層の意欲と主体性が以前より感じられた。話し合いも和気藹々とした雰囲気だった。
  3. (方法3)図2 に6 条件の視点について教師の評価を示した。
    6 項目すべてに有意差があったという結果だった。図3 に話し合い活動に関する3 項目について教師の評価を示した。
    話し合い活動の変容に有意差があるというとも改善に有意差があったという結果だった。
    観察においても話し合いができる出来る場面が増え、授業改善を感じることができた。
    また、図4 に農耕作業に関する知識、技能、理解や協働的な活動等10 項目についての教師の評価を示した。9 項目で有意差があるという結果だった。その他、紙面の関係で記載できなかったが、作業で身に付けたい力3 領域28 項目では、対人関係と作業力は9 割弱、作業への態度は5 割の項目で有意差が見られた。6 条件による授業改善は、作業遂行のために必要な技能の向上にも寄与していると推察された。

Ⅴ. 考察

著者らはこれまで、農耕作業学習について多視点に基づく取り組み、電子黒板教材の導入などの検討を行ってきた。(畠山,久野,2014a、b、2015a、b)。
今回、
(1) 涌井の6 条件に基づいて農耕作業学習の改善を図ることができた。
(2) 生徒同士の対面的なやり取りの機会や生徒がうまくいった共同や改善点のチームの振り返りとしての「話し合い活動の充実」は、アクティブ・ラーニングを深めることにつながったと考えられた。
(3) 作業能力も伸ばすことができた。さらに、話し合い活動を含むアクティブ・ラーニングは、小学部などより低学年から導入する必要があると感じられた。

( 参考文献)
畠山富士雄・久野建夫(2014a):佐賀大学文化教育学部研究論文集第18 集第2 号,17 ~ 39.
畠山富士雄・久野建夫他(2014b):日本特殊教育学会第52 回大会,P5-C-7.
畠山富士雄・久野建夫他(2015a):佐賀大学文化教育学部研究論文集第19 集第2 号,15 ~ 35.
畠山富士雄・久野建夫他(2015b):日本特殊教育学会第53 回大会,P4-3.
涌井恵(2016):.LD 研究第25 巻第4 号,398-405.
千葉大学教育学部附属特別支援学校(2016): 研究紀要第41 号
(倫理的配慮)個人情報保護等の必要な倫理的配慮を行った。


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